企業サイトのセキュリティを強化し、プライバシー規制を確実に遵守するには、多層的なセキュリティ対策が必要です。
社員、管理者、顧客にとって安全で信頼できるデジタル環境を維持しながら、WordPress サイトを潜在的な脅威から守るための対策をご紹介します。

サーバー選びは、企業サイトのセキュリティに大きく影響します。コストを抑えるために共用サーバーを選ぶことも多いですが、その分パフォーマンスの低下や、他のサイトとリソースを共有するリスクも伴います。他のサイトがハッキングされると、自社サイトにも影響が及ぶ可能性があります。
WordPress 専用の高性能マネージドサーバーを利用すれば、こうしたリスクを最小限に抑えられます。セキュリティ機能が標準で備わっているため、余計なプラグインの導入や手間のかかる設定も不要です。
目次
SSLを使用してデータを暗号化する

SSL証明書を導入すると、ユーザーのブラウザとサイト間での通信が暗号化され、第三者による盗聴や改ざんを防ぐことができます。もしSSLを適用していないと、ログイン情報や顧客データなどの機密情報が流出するリスクがあります。
ご利用のサーバーでSSL証明書が自動インストールされない場合は、以下の方法で設定してください。
- サーバーを通じてSSL証明書をインストール(多くのサーバーでは Let’s Encrypt の無料SSLが利用可能)
- WordPress 管理画面の「設定」>「一般」でサイトのURLを「HTTPS」に変更
- サーバーの設定や Really Simple SSL のようなプラグインを使って、すべてのページをHTTPSにリダイレクト
サイトのURLが「HTTPS」で始まっていれば、SSLが有効になっている証拠です。ぜひチェックしてみてください。
ログインセキュリティの強化

企業の情報漏洩を防ぐために、アカウントのセキュリティ対策は必須です。特に管理者や社員のアカウントはしっかり守る必要があります。以下の対策を取り入れて、より安全な環境を作りましょう。
- 複雑なパスワードを設定する:パスワードマネージャーなどのツールを活用し、強力なパスワードを管理しましょう。
- 二要素認証(2FA)を導入する:万が一パスワードが漏れた場合の二次防御として、二要素認証を有効にしましょう。WordPress では、Google Authenticator などのツールが便利です。
- ログイン試行回数を制限する:Limit Login Attempts Reloaded などのプラグインを使い、不正アクセスをブロックしましょう。
これらの対策を実施することで、ブルートフォース攻撃を防ぎ、企業サイトのセキュリティを格段に向上させることができます。
WordPress コア・プラグイン・テーマの最新版を維持する

企業サイトの安全性を高めるには、WordPress コア、プラグイン、テーマを常に最新バージョンに保つことが重要です。
更新には、既知の脆弱性を修正するためのセキュリティパッチが含まれており、放置するとサイバー攻撃のリスクが高まります。
以下の方法で、安全に更新を管理しましょう。
- 自動更新の設定:WordPress 5.6 以降では、メジャーリリースも含めて自動的に更新される仕組みになっています。管理画面の「ダッシュボード」>「更新」で設定を確認・変更できます。
- プラグインやテーマの自動更新は個別に有効化可能です。
- ステージング環境での事前テスト:本番環境に影響を与えないよう、ステージング環境で事前にテストするのがおすすめです。
- 定期的にアップデートをチェックする:管理画面の「ダッシュボード」>「更新」を定期的に確認し、互換性をチェックしながら適用しましょう。
- 不要なプラグインやテーマを削除する:使わなくなったプラグインやテーマは、セキュリティリスクにつながるため、定期的に整理しましょう。
これらを徹底することで、企業サイトの安全性を高め、安心して運用できる環境を維持できます。
信頼できるプラグインとテーマを選ぶ

企業サイトのセキュリティを守るためには、信頼できるプラグインとテーマを使うことがとても大切です。
無断配布されている WordPress プラグインを使用することは避けるべきです。たとえ合法であっても、以下の理由から使用はおすすめできません。
- 自動アップデートを受けられない:
セキュリティ更新が適用されず、脆弱性が放置されるリスクがあります。 - コードに何が仕込まれているかわからない:
改変されたコードが含まれている可能性があり、セキュリティリスクが高まります。
マルウェアやバックドアが仕込まれていることがあり、機密情報の流出やサイトの乗っ取りにつながるリスクがあります。 - 開発者は製品を改良し続けるために資金が必要:
正規の購入によって、開発者が継続的な開発やサポートを提供できるようになります。 - 開発者からのサポートが受けられない:
不具合が発生した場合、公式サポートを受けられず、解決が困難になります。
安全なプラグインやテーマを選ぶ際には、以下のポイントをチェックしましょう。
- 公式や信頼できる提供元から入手する:WordPress 公式プラグインディレクトリや、正規の開発会社のサイト、有名なマーケットプレイスからのみインストールしましょう。
- 評価やレビューを確認する:長期間更新されていないものや、低評価のものは避け、定期的にアップデートされていてサポートが充実しているものを選びましょう。
- 必要最小限のプラグインを使う:プラグインの数が多すぎるとリスクが高まるため、本当に必要なものだけを厳選するのがおすすめです。
- 脆弱性のスキャンを実施する:Wordfence、Sucuri、WPScan などのセキュリティツールを活用し、定期的にチェックしましょう。
適切なプラグインとテーマを導入し、継続的に管理することで、企業サイトの安全性を高められます。
定期的なデータバックアップを取る

どれだけしっかりセキュリティ対策をしていても、人的ミスやサイバー攻撃、システム障害は起こり得ます。万が一の時に備え、定期的にバックアップを取ることで、大切なデータを確実に守り、すぐに復旧できる環境を整えましょう。
XServer などでは、毎日自動でバックアップが行われますが、以下の対策を組み合わせることで、より安全なバックアップ管理ができます。
- BlogVault のようなバックアッププラグインを使い、クラウドストレージへの外部バックアップを実施する。
- バックアップデータを複数の場所(クラウド、ローカルストレージ、外部サーバーなど)に保存し、自動外部バックアップを利用する。
- 定期的にバックアップの復元テストを行い、正常に復旧できるかを確認する。
しっかりとバックアップを管理することで、トラブルが発生した際も、被害を最小限に抑えることができます。
ユーザーのアクセス権限を適切に管理する

WordPress サイトのセキュリティリスクの一つに、不要なユーザー権限の付与があります。企業では、管理者、Web担当者、コンテンツ編集者など、複数のユーザーがサイトを運用しますが、全員に管理者権限を与える必要はありません。
誤った権限設定は、情報漏洩や不正アクセスの原因になる可能性があります。以下の WordPress のユーザー権限を適切に設定しましょう。
- 管理者(Administrator):サイトのすべての設定を変更可能。信頼できるIT担当者のみに権限を付与。
- 編集者(Editor):コンテンツの管理や公開が可能だが、プラグインの管理は不可。広報担当やコンテンツ管理者向け。
- 投稿者(Author):記事の作成・公開が可能だが、他のコンテンツ編集は不可。マーケティング担当者向け。
- 寄稿者(Contributor):記事の作成は可能だが、公開には管理者の承認が必要。ゲストライター向け。
- 購読者(Subscriber):サイトの閲覧や限定コンテンツへのアクセスのみ可能。社内スタッフや外部関係者向け。
ユーザー管理のベストプラクティスとして、以下の対策を実施しましょう。
- 最小権限の原則(PoLP)を適用する:必要最小限の権限のみを付与。
- 管理者権限を限定する:管理者アカウントを最小限にし、アクセス権の乱用を防ぐ。
- 権限管理プラグインを活用する:User Role Editor を使い、企業の運用に合わせた権限管理を行う。
- ログ監視を行う:Simple History などを利用し、ログイン履歴や操作記録を確認する。
- 不要なアカウントを削除する:退職者やプロジェクト終了後のアカウントは適宜削除。
適切なユーザー管理を行うことで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを減らし、企業のデジタル資産をしっかり守ることができます。
マルウェアや攻撃への対策を強化する

企業の Web サイトにとって、マルウェア攻撃は深刻な脅威となります。データの盗難、サイトの改ざん、検索エンジンによるブラックリスト登録、不正アクセスなどの被害を防ぐため、積極的なセキュリティ対策を講じることが重要です。
以下のような対策を実施し、企業サイトの安全性を高めましょう。
- 信頼できるセキュリティプラグインを導入: Wordfence や Sucuri などのプラグインを利用し、ファイアウォール保護、マルウェアスキャン、ブルートフォース対策を強化する。
- 定期的なマルウェアスキャンを実施:マルウェアスキャンを自動化し、脅威がサイトに影響を与える前に検出・除去する。
- ログイン試行回数を制限:不正なログイン試行を防ぐプラグインを活用し、アカウントの乗っ取りを防止する。
- ユーザーアクティビティを監視:管理画面の「ユーザー」セクションを定期的にチェックし、不審なアカウントを排除する。
- ソフトウェアを最新の状態に保つ:プラグインやテーマを常に更新し、脆弱性を修正することでセキュリティリスクを低減。
- WAF (ウェブアプリケーションファイアウォール)を実装: DDoS 攻撃やスパムボット、その他の脅威をサイトに到達する前にブロックする。
プラグインやサーバーのサービスを利用すれば、これらの対策を簡単に導入・管理できます。
ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)の活用

企業サイトのセキュリティ強化には、 WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)の導入が欠かせません。 WAF は、 WordPress サイトと受信トラフィックの間に配置され、悪意のあるアクセスを自動的にブロックする役割を果たします。
企業の Web サイトが直面するリスクを軽減するため、 WAF が提供する以下の機能を活用しましょう。
- 不正なトラフィックをブロック:ハッカーやボットによる攻撃、ブルートフォース攻撃を自動的に検知・遮断。
- DDoS 攻撃の防御:過剰なアクセスを制限し、サイトダウンを防ぐ。
- SQL インジェクションや XSS 攻撃を阻止:フォームや URL 、データベースクエリを介した不正なコードの挿入を検出・ブロック。
- ログインページの保護:不審な IP アドレスをブロックし、管理画面への不正アクセスを防止。
Cloudflare 、 Sucuri 、 サーバー の WAF を活用すれば、これらの脅威を自動的にフィルタリングし、企業サイトを守ることができます。セキュリティ対策を万全にし、安心してサイトを運用できる環境を整えましょう。
社員のセキュリティ意識を高める

どれだけ強固なセキュリティ対策を導入しても、企業の情報セキュリティにおいて最も大きなリスクの一つは ヒューマンエラー です。フィッシング攻撃、脆弱なパスワード、機密情報の誤った取り扱いなどは、セキュリティ侵害につながる可能性があります。
社内のセキュリティ意識を高めることは、技術的な対策と同じくらい重要です。企業文化として、全社員が情報セキュリティを意識できる環境を整えましょう。
すべての社員を対象に、修了必須の セキュリティトレーニング を実施し、以下の内容をカバーすることをおすすめします。
- フィッシングメールやソーシャルエンジニアリング攻撃の見極め :不審なメールやメッセージを識別し、安易にリンクをクリックしないようにする。
- 強力なパスワードと多要素認証( MFA )の導入 :ユニークで複雑なパスワードの作成方法を指導し、 MFA を有効化してアカウントの安全性を高める。
- 企業データの適切な管理 :情報の取り扱い基準を明確にし、不要な共有や持ち出しを防ぐ。
- 安全なインターネット利用 :公共の Wi-Fi を避け、 HTTPS 対応サイトを利用するなど、基本的なセキュリティ習慣を徹底する。
- コンプライアンスの遵守 : GDPR 、 PIPA 、 CCPA などのデータ保護規制を理解し、適切なデータ管理を行う。
また、以下のような方法でトレーニングの効果を高めるのも効果的です。
- 実際にフィッシング攻撃をシミュレーションし、社員が正しく対処できるかをテストする。
- 定期的なセキュリティ研修(四半期ごとなど)を実施し、新しい脅威に対応できる知識を提供する。
- クイズやケーススタディ、実践的なワークショップを活用し、理解度を向上させる。
まとめ
企業の WordPress サイトのセキュリティを強化する10の対策
- 安全なサーバーを利用する
- SSLを使用してデータを暗号化する
- ログインセキュリティの強化
- WordPress コア・プラグイン・テーマの最新版を維持する
- 信頼できるプラグインとテーマを選ぶ
- 定期的なデータバックアップを取る
- ユーザーのアクセス権限を適切に管理する
- マルウェアや攻撃への対策を強化する
- ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)の活用
- 社員のセキュリティ意識を高める
企業の情報資産を守るためには、技術的な対策だけでなく、社員一人ひとりの セキュリティ意識の向上 が不可欠です。定期的な教育と適切なトレーニングを通じて、社内全体のセキュリティレベルを引き上げましょう。